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人生安価買取。的な。

2024年01月02日
139

102. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時12分 ID:66291ca87c (1/13) ID抽出 返信

“話しはまだ終わらない。”

少なくとも高校生のころまで、ギブアンドテイクというのは、テイク側が作りだした言葉だと思っていた。

要領のいい奴がテイクになり、ギブとされる側は一方的に搾取されるだけだ。

社会に対して劣等感を持ちつつも、パンクロック並みに尖った感情をぶん回していた俺(まだ厨二病は治ってないぞ)も、年を取るにつれ、社会に“微妙に”馴染んでいき(本当か)、どんどん丸みを帯びるようになった。(と思う。)

昔と比べりゃ、そいつにブンブン振り回される機会も少なくなってきたわけだし、今の方が生きやすいかなと考えながら、アサヒのノンアルコールを口にしていると、ふと昔のことを思い出した。

103. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時13分 ID:66291ca87c (2/13) ID抽出 返信

記憶は、大学時代に遡る。

当時の俺は完全にアウェーすぎた。(“今も”では?)

まわりがバイトや勉強に勤しみ、シャレオツな鎧で身を固める中、同期達とうまくコミュニケーションが取れない俺は、授業が終わるとそそくさと家に帰って、布団にくるまっていた。

そして、深夜になると、暗めのパーカーを身にまとい、MDプレーヤーにレディオヘッドを突っ込んで、深夜の住宅街を徘徊していたものだ。(よく職質されなかったな。と今でも思う。)

こんな俺でも、唯一の居場所というのがあった。

104. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時14分 ID:66291ca87c (3/13) ID抽出 返信

それは偶然入った美術サークルの部室で、金曜の夕方になるとそこの先輩たちといつもつるんでいた。

近所の総菜パンは高すぎる、ボッタクリだ。ということから、人間は本当に生まれるべきなのか。なんてことまで話し合ったりした。

当時ならドン引きされるような話題を受け入れてくれたのも、この場所と、数えるくらいの仲間内だけだったような気がする。

105. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時15分 ID:66291ca87c (4/13) ID抽出 返信

その中でも、俺のとんちんかんな発言を笑いながら、また、時には真剣に聞いてくれる先輩がいた。

容姿端麗で、理解力があり、するどい指摘ができる。さらにはツッコミがうまく、自分の持っている趣味への造詣が深い。

なおかつ行動力のある先輩で、明るく笑顔を振りまく、まさしく聖人とも呼べる存在だった。

どうしてそこまで完璧なんだ。俺にもその能力とポジティブ、少し分けてくださいよ。

元来、ネガティブの渦の中でスタックしまくっていた俺は、先輩のやさしさに感激し、彼女の能力値の高さと底抜けた明るさを羨ましがった。

106. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時16分 ID:66291ca87c (5/13) ID抽出 返信

俺が大学2年の春。

先輩は大手ハウスメーカーに内定が決まって、めでたく卒業することになった。

卒業式の夜。

他の先輩方は、県外の実家にすぐに帰省してしまっていた。

大学周辺にいても、暇だからという理由で、駅前のチェーン店で差し飲みをすることになった。

勤め先が都会でさ。好きなスリーピースバンドのイベントにゼロ秒感覚でアクセスできるわけ。これって凄くない?と、いつになく上機嫌。

カシスオレンジを飲みながら、何を注文するか話しながら迷って、最終的にたこわさにする。

社会人になるから、おごってあげるなんておっしゃる。

やっぱ、持つべきは先輩っすね。と言うと、笑いながら、後輩にも同じことをしてあげよ、と言う。(いい人過ぎる。)

107. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時17分 ID:66291ca87c (6/13) ID抽出 返信

だけど、もうそろそろお開きかなという頃合いだった。

どんな流れで、そんな話しになったのか思い出せない。

少し顔が赤くなった先輩が、溶け切った氷で、中身のふやけたグラスを片手に、
真顔でポツリ、つぶやいたのだ。

永遠に一人かもしれない。本当に幸せになれるのだろうか。と、

いつもは見せない、突如として現れた先輩の深みに対して、凄まじいボデイブローを面食った気がして、少したじろんでしまった。

モラトリアムから社会という場に出る。ということに不安を抱いていたのか。

もしくは、最近あったという身内の不幸のために、一瞬、気分が落ち込んだのかもしれない。

108. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時19分 ID:66291ca87c (7/13) ID抽出 返信

今は、ひとりでも生きていける時代がやってきてるみたいですし。何とかなりますよ。

などと誤魔化しぎみに、そして、いつもより明るめに返した。

帰り道で一人、自分の発言は返答として正しいものだったのか。と疑問に思った。

あと、先輩の言う、幸せって何なのか。あんなに趣味を突き詰めて楽しそうなのに、まだ幸せじゃなかったのか。

109. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時19分 ID:66291ca87c (8/13) ID抽出 返信

先輩の発言を思い返すたび、冷や汗が止まらなかった。

聞いてはいけないことを聞いてしまったという気まずさと、自分自身も抱えている不安要素を、思いがけなく、突かれてしまったことによる焦りが、身体から一気に滲み出た形になった。

当時は感情を整理するだけで手いっぱいだったけど、今にしてみれば、分かることも多い。

お前は利用されているだけだぞ。と、他人から散々いわれてきた自称ギブ側の俺には、何となくわかるのだ。

110. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時21分 ID:66291ca87c (9/13) ID抽出 返信

先輩はきっとギブ側だ。

明るいはずの先輩なのに、なぜかしら、緊張みたいなものを感じていたのは、俺だけだろうか。

人とかかわるときは、明るくふるまって、自分と過ごす時間を有意義なものにしようとする。どんなに友達がたくさんいても、いずれいなくなるんじゃないか。見棄てられたくない。

今が良くても、将来、自分がどうなるのかわからない。趣味に没頭する。その時間は不安を忘れていられるから。

相手に隙を見せないように、すべてを完璧にして、逆に不安を与えたりして。

俺のアホみたいな、この浅い考え、いや、妄想が本当のことならば、器用なのに、なんて不器用な生き方か。とツッコミたいところだ。

そんな生き方じゃ、気苦労が絶えないだろうな。もしかしたら、己の精神を削っていく奴らにずっと出会い続けていたのかもしれないし、これからもそうなのかもしれない。

111. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時24分 ID:66291ca87c (10/13) ID抽出 返信

じゃあ、俺はそんな人に対して一体どうするか。

うーん、どうしようもない。

同じ不安を抱えているけど、問題は解決しようがないと、答えが出た。

それは、大学を卒業してから社会人になって、ずっと後のことだった。

ただ、今の俺が悩んでる人に何かするとなれば、ギブ側ってのは確かにつらいけど、いつか、相互共に認めあえるようなテイクが現れるんじゃないかと信じてるんですよ。って伝える。

俺は歳をとって、テイク側を見つける努力をやめたから、出会いの機会はなくなってしまったけれど。

でも、俺以外の誰かが”テイクに出会えるという希望”を持っているのであれば、信じていたい。そしたら、俺はその考えを伝えるし、少しでも勇気を与えられるんじゃないか、と思うから。

112. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時25分 ID:66291ca87c (11/13) ID抽出 返信

そういえば、先輩はどうしているだろう。

サークルで集まることもなくなり、連絡は長らく途絶えている。

きっと、最高のテイクと出会ってるだろう。

幸せそうな家庭を築いて、最近は花粉がひどくて困るわー。薬も効かないし。なんて言っていて。

せわしなく、子どもたちが部屋を走り回る中、日差しのぬくもりを包んだ、ふかふかの洗濯物をせっせとたたんだりしている。

そうして、何でもない休日を過ごしているに違いない。

そうであってほしいよな。

113. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時26分 ID:66291ca87c (12/13) ID抽出 返信

ちょっとは成長したんですよ。と、シワの増えた俺は一人、机の前で自嘲気味に話しかける。

テーブルのカシスオレンジはもう飲み切った。これで二杯目になる。

味も薄くぼやけてしまった、手元にあるレモンサワーが、アサヒのノンアルコールに変わっていることに気づかない。

大丈夫っすよ。絶対、幸せになるっすよ。と、嘘でもいいから言う。

ちょっとはましな返答をしてくれるじゃん。と笑いながら褒めてもらう。

手元が少し暗いくらいの、安居酒屋の照明の中、たこわさを食べながら。

俺と先輩の会話は、今もなお、終わることなく続いている。

114. 名無しのおっちゃん

2024年03月17日 19時28分 ID:66291ca87c (13/13) ID抽出 返信

追記:
前の更新から、もう一か月経つんじゃないか(半ギレ)

遅くなりながらの更新。申し訳ございませんでした。

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