入店すると、期間限定で天然いくら丼をやっている。

890円。特盛なら1490円。成金か、はたまたブルジョアか。

まさかね。と思い、鶏の照焼丼と小うどんをご馳走になる。

ああうまかった。鶏が柔らかくて肉厚。うどんも出汁が良かった。

ところが、だ。

正月の二日酔いで吐きそうな状態で、ぼんやりとした脳内に、天然いくら丼の画像がフラッシュバックするのだ。

光輝く卵。あの透き通った紅は、バターのように濃厚なとろみが口内に広がる、至福の時を約束している証だ。

いかんいかん。1500円あれば、安物ウヰスキーボトル一本分だろ。

ヘタすりゃ1週間の食費の半分、といったところ。

その場限りの欲望に流されて、血と汗にまみれた貴賤を損なうなどあってはならない…